労災保険手続きガイド

労災保険が果たす役割とは

労災保険の特徴は労災被害者の迅速な救済です。労災保険という仕組みがないとすると、労災被害に遭った労働者は会社に損害賠償の請求を行うことになります。裁判を起こし、労災事故の責任が会社にあるということを一個人の立場で立証しなければいけません。弁護士費用なども必要になりますし、何より裁判は長引きます。勝訴するまで補償を受けられないので、状況によっては泣き寝入りをせざるを得ないパターンも出てくるのです。

こういったケースを生まないために、労災保険は会社の責任を立証するまでもなく労働者の損害を会社に代わって補償します。労働者は治療費や休業補償がまさに必要になる事故直後に補償給付を受けることができます。会社にしても労災の補償を免れることができ、かつ事故に遭った労働者と裁判で対立する必要がなくなります。これによって職場復帰もスムーズになるのです。

ただし、補償の金額は割り引かれることになります。労災保険が支払ってくれるのは労災によって発生した損害の賠償額の6割になります。もし残り4割を受け取りたいと思ったら、改めて会社に損害賠償の請求を行わなければなりません。

このように労災保険では、弱い立場におかれやすい労働者を救済するため、労災の責任について立証を免除し、迅速な補償給付を実現します。企業側も無条件で労災の補償責任を負うことになるので、労災保険への加入や労災事故の発生防止への動機が生まれるのです。労働者が安心して働ける環境を作るために労災保険は欠かせないものだと言えるでしょう。